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医薬品特許戦略ブログ 第7回:UAEのパテントリンケージ

先発対後発両サイドの特許戦略に必要不可欠な知識や最近の話題をお届けする「医薬品特許戦略ブログ」を配信します。製薬関連企業の皆様はもちろん、アカデミアや投資家の皆様にも参考にしていただけるような、実践的なポイントをお届けしたいと思います。

今回は、「UAEのパテントリンケージ」について

UAEで最初にパテントリンケージが導入されたのは,2000年の厚労省令(Ministerial Resolution from the Ministry of Health and Prevention (MOHAP))404号である。

この指令により,UAEは,知財制度の不備により米国企業・製品の障害となる国をリストアップしている米国の監視リスト(Special 301 Report Watch List of the Office of the United States Trade Representative)の対象から外れたため,UAEのパテントリンケージ導入は米国に対して知的財産を尊重していることをアピールする狙いがあったように思われる。

 続いて,2002年特許法第71条3項では,MOHAPにおける後発品(同等の医薬品)の承認要件として,申請者は,原産国からのFTO報告書を申請書類に添付することが義務付けられ,製品の原産国(製品の輸入国)において既存の特許を侵害するような製品は販売承認を受けることできない旨が規定された。ところがこの後,MOHAPが原産国で特許が残っている医薬品の後発品2種類を承認し,米国研究製薬工業協会(Pharmaceutical Research and Manufacturers of America:PhRMA)が強い懸念を示すなど,UAEにおけるパテントリンケージの実効性は不明確なものとなっていた。

 2020年には,厚労省令321号の第4条において,「後発医薬品の製造販売承認の申請する者は,先発医薬品が当該国で有効な特許文書を有していないことを証明する書類を提出しなければならない」と規定された。なお,同省令には,先発医薬品に8年のデータ保護期間が与えられる旨の規定も含まれる。

 以上より,厚労省令321号以前は,先発医薬品のデータ保護期間が無く,さらに省令404号や2002年特許法には「原産国の特許」との記載があったことを考えると,従来UAE国内には先発医薬品が存在せず,海外で特許が切れた新薬(先発医薬品)と同等の医薬品(後発医薬品)が販売されていたことが伺える。

参考文献:

Nadeen Nusair「Patent Linkage in Saudi Arabia and UAE: a tool to prevent patent infringement」(2021)https://www.linkedin.com/pulse/patent-linkage-saudi-arabia-uae-tool-prevent-nadeen-nusair(as of May 8, 2023)

第71条(3)「…世界貿易機関の加盟国の一つにおいて,当該出願の一つの主題の保護のために特許が付与され,その保有者が当該国においてその発明を商業ベースで販売することを許諾されている場合,出願人は,当該国の関係機関が出願人にその発明を商業ベースで販売することを許諾した日以降,当該発明を販売する独占権を有する」。

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