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エスキューブ メールマガジン 2022年2月号

メルマガ2月号をお届けします。4月1日より特許料等の料金が改定されます。特に、クレーム数の多い特許や古い特許については、影響が大きいようです。なるべく3月中に手続きできるよう、お早めにご準備を!

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                       2022年2月号

━ コンテンツ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

知財基礎講座■

(1)特許出願公開

ニューストピックス

 4月1日より特許料等の料金が改定(特許庁)

セルフレジ特許訴訟、和解が成立

新たな保護対象の意匠登録事例を公開(特許庁)

海賊版対策で国際組織を創設(主要国の著作権保護団体)

特許非公開制度、審査は2段階(政府)

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知財基礎講座■

(1)特許出願公開

質 問

 「特許出願を行うと特許出願した発明の内容が同業他社に知られてしまう」と聞いたことがあります。特許出願を行うとその内容はすぐに世の中の人に知られてしまうのでしょうか?

回 答

<特許出願の内容は出願日から1年6カ月後に公開されます>

 今回のお問い合わせは特許出願公開に関するものです。

 特許庁は特許出願を受け付けると直ちに「受領書」を発行して特許出願番号と特許出願日を付与してくれます。

 特許出願番号はカレンダーイヤーごとに1番から付与されます。特許庁が2021年に受け付けた最初の特許出願には「特願2021-1」、100番目に受け付けた特許出願には「特願2021-100」という特許出願番号がそれぞれ付与されます。特許庁が受け付ける特許出願の数は毎年32万件程度になります。

 特許庁は特許出願を受け付けた後1年6月(=18カ月)経過するまではその内容を秘密にして保持します。誰による、いかなる内容の特許出願を受け付けたのか秘密にしてくれます。

 同一の発明については一日でも先の特許出願に特許が与えられます(先願主義(センガンシュギ)特許法第39条)。そこで、特許出願を行うと特許出願人は「先願の地位」を獲得できます。もしも、その後に、だれかが、同一内容の発明について特許出願してきても、その後からの特許出願を「同一の発明について後から行われた特許出願ですので特許は認められません」としてもらえる地位です。

 特許出願人は、「当社はこの製品に採用した新技術について特許出願し、特許庁から特許出願番号『特願2021-○○○』の付与を受けています。」と宣伝できます。このときに、同業他社が、特許庁のJ-Plat Patに特許出願番号「特願2021-○○○」を入力して検索しても出願日から1年6月経過するまではいかなる情報も取得できません。

 一方、出願日から1年6月経過すると、特許庁は、1年6月前に受け付けた特許出願の内容(特許請求されている発明を説明している文章、図面、特許出願人・発明者の情報(住所・名称・氏名))を公表します。

 この公表は、紙に印刷した特許出願公開公報として特許庁から発行され、また、インターネット上のJ-Plat Patに電子情報が掲載されることで行われます。電子情報でインターネット上に公表されますから、この後は、特許出願番号を用いてだけでなく、特許出願人の名称(例えば、同業他社の会社名など)や、発明を説明する技術用語などをキーワードに用いて特許出願の内容を検索できるようになります。

 このように、「特許出願を行うとその内容はすぐに世の中の人に知られてしまう」わけではありませんが、出願日から1年6月経過すると特許出願の内容は世界中の人に知られるようになります。これを「特許出願公開」(特許法第64条)といいます。

<なぜ出願日から1年6月で公開されてしまうのか?>

 「特許制度は、新しい技術を公開した者に対し、その代償として一定の期間、一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し、他方、第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与える(特許権の存続期間中においては権利者の許諾を得ることにより、また存続期間の経過後においては全く自由に)もの」です。「このように権利を付与された者と、その権利の制約を受ける第三者の利用との間に調和を求めつつ技術の進歩を図り、産業の発達に寄与していくもの」です(工業所有権法逐条解説 特許法第1条)。

 その昔の日本では、特許出願の内容は特許庁で審査を受けて特許成立するものだけが公表されていました。この仕組みですと、どのような発明について特許出願が行われているのか特許出願人以外は知ることができません。

 このため、第三者の特許権成立が、突然、公示され、特許権侵害になるのを避けるため、自社が実施している技術内容を急きょ変更しなければならない事態になることが起こり得ます。いわゆる「サブマリン特許」です。これでは安定した企業活動を行うことが難しくなります。

 また、同業他社が既に特許出願を行っている発明であることを把握できたならば別の方向に研究を進めることが可能であったのに、把握できないため、同業他社が特許出願済の発明内容について研究開発を続けていたという事態が起こり得ます。これは、一企業にとっても、また、日本の産業界全体でみても、重複した研究を行い、重複した投資を行っている、ということになります。

 そこで、特許庁での審査を経て特許成立することになってからでなければ特許出願内容が公表されないことで生じる企業活動の不安定性や、重複研究、重複投資という弊害を除去する目的で、昭和45年(1970年)の特許法一部改正によって特許出願公開制度が採用されたのです。

 「特許出願日から1年6月」とした理由は、その当時、世界で特許出願公開制度を採用していた国(当時の西ドイツなど)における出願公開が出願日から1年6月後に行われていたからなどとされています。

 日本国特許庁では、特許出願日から1年6月経過した時点で、原則として、すべての特許出願について特許出願公開が行われることになっています。

 なお、特許出願日から1年6月経過するまでに審査請求や、早期審査の請求が行われることで審査が完了して特許権成立し、その内容を社会に公示する特許公報(=特許掲載公報)が発行されている場合や、出願公開前に特許出願が取下げ、放棄あるいは却下され又は拒絶査定が確定しているときなどでは、例外的に、特許出願公開が行われないことがあり得るとされています。

 米国、中国、韓国、欧州諸国、等、世界の主要な国々、地域の特許庁では、いずれも、原則として、特許出願日から1年6月経過した時点で1年6月前に受け付けていた特許出願内容を公表する特許出願公開制度を採用しています。

 「出願後ただちに」ではないとはいえ、「出願日から1年6月経過しただけで出願内容が世の中に知られてしまうのでは特許出願人に不利益なのではないか?」というご意見があるかもしれません。

次回は、このようなご意見に関連しているご質問への回答を紹介します。

ニューストピックス

●4月1日より特許料等の料金が改定

特許法等の一部を改正する法律の施行に伴い、2022年(令和4年)4月1日より、特許料(特許登録料、特許年金)、商標登録料、商標更新登録料、国際出願(特許、実用新案)関係手数料、国際登録出願(商標)関係手数料等が改定されます。

特許については、改定されるのは特許料のみであり、出願料、審査請求料、審判請求料等は改定されません。

また、意匠については改定される料金はなく、商標についても出願料は改定されません。

改定後の料金の適用は、出願日ベースではなく、支払日ベースになります。4月1日より前に納付される特許料等は改正前の料金が適用されます。現行料金は3月31日までに納付手続したものでなければ適用されませんので、ご注意ください。

【特許料】(平成16年4月1日以降に審査請求をした出願)

詳細については、特許庁ホームページでご確認ください。

https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/kaisei/2022_ryokinkaitei.html

●セルフレジ特許訴訟、和解が成立

ファーストリテイリングとIT企業のアスタリスクは、ファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」「ジーユー(GU)」で採用されているセルフレジを巡る特許侵害訴訟について、和解が成立したと発表しました。

問題となったセルフレジは、上向きのくぼみに商品や買い物かごを置くと、無線自動識別タグで商品情報を読み取って合計金額が表示される機能を備えています。ファーストリテイリングによりますと、この技術を使ったレジは、ユニクロでは国内の8割、GUでは9割の店舗に導入されています。

アスタリスクは同社の特許権を侵害したとして、ファーストリテイリングに対し、特許権侵害訴訟を提起した一方、ファーストリテイリングは「容易に発明できる技術だ」として、特許無効を求める審判を申し立てていました。

今回の和解により、アスタリスクとNIP(アスタリスクから特許の譲渡を受けた会社)は、ファーストリテイリングに対する特許侵害訴訟を、ファーストリテイリングは、アスタリスクとNIPに対する特許無効審判請求をそれぞれ取り下げます。

 和解により、両陣営は今後、それぞれの権利や事業を尊重し、互いに良好な関係を築くとしています。和解金の支払いなど、和解条件については「一切公表しない」として、詳細は明らかにしていません。

●新たな保護対象の意匠登録事例を公開(特許庁)

特許庁は、「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例」を公開しました。

 2020年4月1日に新たに保護対象となった意匠の出願・登録状況については、多くの企業から高い関心が示されているとして、特許庁は、意匠登録されたもののうち参考となる事例を特許庁HPで公開し、今後の出願の参考にしてほしいとしています。登録内容はサムネイル画像の一覧からも簡単に確認できます。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html

 また、特許庁は新たな保護対象についての意匠登録出願件数と登録件数を公表しました。

 それによると、新たな保護対象についての意匠登録出願件数(2022年1月4日時点で取得可能なもののみ)は、画像2,050件、建築物632件、内装435件。

また、登録件数(2022年1月4日時点で取得可能なもののみ)は、画像749件、建築物298件、内装152件。

https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/seidogaiyo/document/isyou_kaisei_2019/shutsugan-jokyo.pdf

海賊版対策で国際組織を創設(日米中韓などの著作権保護団体)

漫画や映画などの海賊版被害がグローバル規模で問題となっていますが、出版社や動画配信会社で構成する日米中韓などの主要国の著作権保護団体は2022年4月、共同で国際組織「国際海賊版対策機構/International Anti-Piracy Organization (IAPO)」を創設することを決めました。

デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、国境を越えた海賊版の被害が拡大していますが、捜査当局の国際連携は進んでいないのが現状です。そこで各国の著作権保護団体が国際組織を立ちあげ、被害情報を共有するなどして、各国の当局に迅速な捜査を要請することにしました。

日本においては、2021年に海賊版サイトで読まれた漫画の被害額は少なくとも1兆円を超えることが出版社などでつくる一般社団法人「ABJ」の調べで分かりました。

20年の4.8倍に急増しており、同年の正規の漫画販売額(6126億円、出版科学研究所調べ)の1.6倍に当たるなど、被害が広がっています。

特許非公開制度、審査は2段階(政府)

政府の経済安全保障推進法案に関する有識者会議は、法制化に向けた提言骨子をまとめました。

骨子では、軍事転用できる先端技術の特許を非公開にする制度(秘密特許)の導入に併せ、安全保障上、公開を制限すべき技術かどうかの審査については、特許庁が1次審査を行い、防衛省と内閣府を中心とした新設組織が2次審査を行うとしています。審査期間は出願から合計10カ月以内を想定しています。

また、機微情報の流出防止に向け、情報の保全義務に違反した特許出願者に科す罰則の導入のほか、非公開対象とした技術は、外国での特許出願も制限すべきとしています。

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